トップページ文章魔法の洞窟

★魔法の洞窟



「はぁ・・・なんでこんなことに・・・」

もう何度目かわからないため息をつきながら、私は樹海を進んでいた。
本当にこの先に目的の場所があるのだろうか?

地図を見つつ、懐からコンパスを取り出し行き先を確認する。
最新の科学技術により、磁場の狂った樹海の中だろうが何処であろうと正確に北を示すことのできるコンパスを。

さて、何故私がこんなところにいるのか。どこへ向かっているか。皆さんに説明する必要がありますね。

それは先週末のことだった・・・


「魔法の・・・洞窟・・・?」
「そうだ、次の記事はこのテーマできまりだ」

ばかばかしい。この科学全盛の時代に『魔法』?
しかも私の所属しているこの編集部は科学雑誌を担当しているというのに。

あきれている私には目もくれず編集長は『魔法』についてつらつら語っている。

「・・・それで、魔法というものは・・・故に・・・科学と深い関わりが・・・
聞いてるのか?」

聞きたくも無い。

とはさすがに返せないので適当に相槌を打っておく。
その適当が仇となった・・・

「じゃ、この『魔法の洞窟』に向かってくれ。しっかり取材してこいよ」
「え・・・ちょっ・・・」
「俺はこれから今尚錬金術を研究している学者の学会に参加するから。あとはヨロシク」

さっさと出て行ってしまった・・・

私にどうしろと?

机に残されたのはその洞窟への地図や資料のみ。


「この辺りよね・・・」

呆気に取られていた割にちゃんと取材に向かう自分のクソ真面目な性格に嫌気がさす。

渡された地図の印が付けられた場所に程近い場所まで来たと思われる。
樹海を抜け、辺りは岩山になっている。
なるほど、確かに洞窟らしきものが岩肌に掘られている。
しかし・・・

「・・・どれよ?」

候補地はいくつもあった。
岩壁にはざっと見渡しただけでも10・・・いや、20はあるだろうか。それだけの数の横穴が開いている。その一つ一つが闇へと続いているため、闇雲に入って調査しようものならば日が暮れるどころか手持ちの食料がなくなり餓死しそうかとも思えるほどだ。

どこから調べよう・・・しっかり吟味して選ばないと。

その時である。


ぽっかり開いた無数とも思える洞窟の闇から声が聞こえた。

「女・・・何の用で此処へ来た?」

びくっ!

その声はまるで地獄の底から響くような低音で、思わず体を縮めてしまった。

「ま・・・まほ・・・私・・・頼まれ・・・取材・・・」

もう何を言っているかわからなくなった。
落ち着け・・・落ち着くのよ、私。

「わ・・・私は『月刊科学技術万歳』編集部の者です。こちらに『魔法の洞窟』という場所があるそうなので、取材させていただきたいのですが・・・」

まだ心臓がバクバク言っているし、喋っていても時々声が裏返るが、とりあえずこれで用件は伝わるだろう。

「そうか・・・では入れ」

ごごごごご・・・

何もなかった岩壁の一部が開き、招き入れるように松明が手前から順番に灯る。

ごくり。

緊張しながらその先に進む。

そしてその先にあったものは!


「な・・・何これ・・・」

洞窟の奥に着くと、そこにあったものは・・・

とてつもなくアホな顔で、とてつもなくアホなポーズをした石像があった。

「ものすごいアホ・・・」

近付こうとすると、

ばしゅっ!!

突然アホの石像がお辞儀をするように動いた。

「え、何で前屈・・・」

アホ・・・前屈・・・

まさか・・・

「・・・『阿呆の前屈』?」

「いかにも、これがお主の探していたものだ」


『魔法の洞窟』というものは『阿呆の前屈』の聞き間違いである。以上。

そう記事に書くしか道は無かった・・・

↑上へ戻る

<文章>へ戻る

inserted by FC2 system